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■勇者
神戸・花隈町。
名作といわれるアドベンチャーゲーム「ポートピア連続殺人事件」の
舞台となった町でもある。
商店街の片隅でやっとパスワードを発見した。
この発見で何が変わるのか?
ガムテープに書かれた、お世辞にもあまり綺麗と言えない文字列を見つめていると、
いつのまにか目の前に女が立っていた。
…この人、気配を感じなかった。
不思議と、どんな女で誰に似ているか、何にも例えられない。
顔よりも耳元の大きめなイヤリングの方が印象に残る。
空気みたいな存在感の持ち主だった。
「貴方が何故ここに来たかは知ってるわ。
だから、貴方が今関わってる事件の事を教えて。」
その声は、なぜか逆らえない響きを含んでいた。
イエ郎のこと。山田一郎のこと。あんたがたのこと。
知っていること全てを話してしまった。
「教えてくれてありがとう。
うちの若いのが迷惑をかけたようね。
構成員の暴走は組織に悪影響しかもたらさない。
ボスに伝えて何らかの措置をとるわ。」
組織…?……!
例のDHMO事件の主犯とされているあの組織!?
ってことは、山田もこの女の人もあの組織の人間!?
しかも、この人、山田より偉いっぽい…。
「あ、あの……1つだけ聞いていいですか?黒幕って誰なんですか!?」
「犯人はヤ……野暮なことは聞いちゃだめよ。
…有益な情報をありがとう。さよなら。」
遠ざかっていく女の後姿を呆然と見つめていたが、いつのまにか風のように消えていた。
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