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■勇者
「果たし状」
そう書かれた紙を手に、船に乗って宮島まで渡った。
海面にそびえ立つ朱塗りの大鳥居。
平安時代の寝殿造りの優美さ。
流石世界遺産。
観光してる場合ではないが景色に見とれつつ、目印となる場所に到着。
パスワードも無事に発見した。
探してるうちに夜もふけてきて、あたりはすっかり静かになっている。
「…結局、山田はどうしたんだ?果たし状って何だったんだ?」
なんだ、このスレは!?
先月イエ郎を自殺に追いやった時に、首吊りの縄が切れたのはお前らのせいかよ!
今度は、仕入れた秘密を暴露してショック死させたのを妨害する気か!?
この間忠告したのをもう忘れたのかよ!
なめるんじゃねーよ!
先に謎を解いて、待ち伏せして、勇者って奴をぶっ殺してやる!
俺らの組織の力を使えば現地になんてすぐに行けるんだぜ。
スレではあんな書き込みをしていたんだ。
確実にこの問題は山田も入手して宮島に向かっているはずだ。
山田よりも先に着けたのか?
その時、背後に気配を感じた。
そこには、黒いコートをまとい、目つきが悪い上に血走っている男が立っていた。
「お前が”勇者”って奴か?」
やばすぎる……この人と関わりあいたくない…。
「ゆゆゆゆ…勇者って何ですか?知りませんよ……」
「その手に持ってる果たし状は何だ…俺の邪魔をする奴は…殺す…」
人の話聞いてんのか、コイツ!?
ごめん、みんな!
こんな奴と果し合いになっちゃったりするのは無理!!!
逃げる!
「よ、よくわかんないですけど、さっき
「謎が…パスワードが…」
とか言ってる人ならみかけましたよ!
その人が落とした紙を拾ったんですよ…」
「そいつだ!そいつはどこに行った!?」
「……なんか島の反対側のほうに歩いて行きましたけど」
「殺してやる!」
そう言うや否や黒いコートの男はそのまま島の反対側へ走り去って行った。
ピンチを切り抜けた安堵感に脱力しそうになりながら、
急いで宮島を出る高速船乗り場に向かった。
ぎりぎり最終便に間に合ったようだ。
これでもうあの男が追ってくることはない。
あれが山田か…。
イエ郎もあんな奴に狙われるなんて、一体何をしたんだ?
恐ろしすぎる…。
小さくなる宮島を見ながらそんなことを思っていると、ふと気がついた。
山田は最終の船に乗れなかった。
ということは、今日はもう宮島から出られない。
イエ郎を殺しに行くことはできない。
そうか!これが過去にコピーされるのか!!
新型ネプリ、やるじゃん。
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